指数関数と導関数のアニメーション(学生向け)
正の実数を底とする指数関数と、その導関数の関係を、グラフのアニメーションと静止画を使って説明します。
(There is the English(英語) page.)
(最終更新日: 2021年3月24日)
前書き
数学の解析学の本には、ネイピア数 \(\mathrm{e}\) を底とする指数関数 \(\mathrm{e} ^x\) のグラフが、必ず掲載されています。 また、その式の導関数が、元の式と等しいことも、必ず掲載されています。
しかし、正の実数 \(a\) を底とする指数関数 \(a^x\) のグラフは、掲載されていないことがあります。 また、その式の導関数のグラフは、まず、掲載されません。
そこで、指数関数 \(a^x\) と、その導関数の関係を、視覚的に理解するために、これらのグラフのアニメーション(動画)を作成しました。 また、これらのグラフを、より理解するために、グラフの特徴的な例を、静止画と共に説明しました。 そのアニメーションと静止画を、次の章 に公開します。
このページは、数学を勉強している人(学生など)を対象としています。 特に、数式や、そのグラフを読み取ることに慣れていない人を対象としています。
これらのアニメーションと静止画は、SageMath で作成しました。 その SageMath スクリプトを、次のページ に公開します。 ご興味のある方は、そのページもご覧ください。
指数関数とその導関数のアニメーション
数式
\(a\)(正の実数、\(a \neq 1\))を底とする指数関数 \(y\) と、その導関数 \(y'\) の数式を、以下に示します。
\[\begin{align*} y \, & = a^x \\ y' & = a^x \log a \end{align*}\]
ここで注目して欲しいことは、以下の2点です。
- どちらの式にも「\(a^x\)」が含まれている。
- 導関数の式にだけ「\(\log a\)」が含まれている。
\(a^x\) の部分は同じなので、どちらの式の値とも、\(a\) と \(x\) の値に応じて、似たような変化をします。 また、導関数の式の値は、この \(a^x\) に、常に、\(\log a\) を掛けた値になります。
これらの式については、後で、もう少し詳しく説明します。 まずは、上記のことを理解した上で、次のアニメーションを見てください。
アニメーション
前述した式の \(a\) を、\(1.1\) から \(5\) まで変化させたときの、2つの式のグラフの変化を、以下のアニメーションに示します。 まずは、アニメーションを見て、全体の挙動を、大まかに把握してください。
アニメーションの中の個々のグラフは、前述した、指数関数 \(y=a^x\) と、その導関数 \(y'=(a^x)'=a^x \log a\) の2つの式の曲線を示しています。 \(a\) が変化することで、この2つの曲線の形も変わります。
ここで注目して欲しいことは、\(a\) が変化していくときの、以下の変化です。
- 導関数の曲線が、指数関数の曲線に、徐々に近づいていく。
- ある時点で、2つの曲線が一致する。
- その後、導関数の曲線が、指数関数の曲線から、徐々に離れていく。
指数関数の曲線に対して、導関数の曲線は「移動していく」ように見えます。
このような曲線の挙動を理解するため、前の節で説明した「\(a^x\)」と「\(\log a\)」を思い出してください。
指数関数の式は、\(a^x\) そのものです。 そのため、指数関数の曲線の挙動が、\(a^x\) の変化の様子を表しています。
一方、導関数の式は、\(a^x\) に \(\log a\) を掛けています。 そのため、導関数の曲線は、\(a^x\) と \(\log a\) の2つの式の影響を受けます。 導関数の曲線の「移動していく」ような挙動は、\(\log a\) の影響と考えられます。 よって、このような挙動を理解するポイントは、\(\log a\) の変化の様子を理解することです。
そこで、以下に示す、対数関数 \(\log x\) のグラフのアニメーションを見てください。
対数関数 \(\log x\) のグラフには、ユーザーに注目して欲しい箇所を強調するために、補助線や矢印を追加しています。 \(\log x\) の曲線の形は、アニメーション全体を通して、変化しません。 グラフの中の赤い点は、\(\log x\) の \(x\) に、\(a\) を代入したことを表しています。
ここで注目して欲しいことは、\(\log a\) の値の、以下のような変化です。
- \(1\) より小さい値から、徐々に、大きくなり、\(1\) に近づいていく。
- ある時点で、\(1\) になる。
- その後、徐々に、\(1\) より大きくなる。
このように、\(\log a\) は「\(1\) を含めた数値の範囲」で変化します。
前述したように、導関数の曲線は、\(a^x\) と \(\log a\) を掛け合わせたものです。 よって、導関数の曲線は、以下のように変化します。
- \(a^x\) に \(1\) より小さな値を掛けた値から、徐々に大きな値を掛けた値になる。
- ある時点で、\(a^x\) に \(1\) を掛けた値になる。
- その後、徐々に、\(a^x\) に \(1\) より大きな値を掛けた値になる。
このように、\(\log a\) の変化を理解することで、導関数の曲線の「移動していく」ような挙動を理解することができます。
前述した2つのアニメーションは、同時に見たほうが、より理解が深まります。 そこで、この2つのアニメーションを横に並べた、新たなアニメーションも作成しました。 このページでは、この新しいアニメーションを、「並列アニメーション」と名付けています。
しかし、この並列アニメーションは、横幅が長いため、ブログページ内に収まりません。 そこで、別のページ(アニメーション単体のページ)で、表示することにしました。
以下のリンクを、ご利用ください(お使いの Web ブラウザが対応している動画形式を、選択してください)。
今まで説明したことを、文章ではなく、式の形で、まとめます。
\(a\) が変化したとき、指数関数 \(y=a^x\) と、その導関数 \(y'=a^x \log a\) の、2つの式の曲線は、以下のような関係になります。
\[\begin{align*} y & > y' & (\, \log a & < 1 \,) \\ y & = y' & (\, \log a & = 1 \,) \\ y & < y' & (\, \log a & > 1 \,) \end{align*}\]
次の節で、この3つの状態の具体的な例を、静止画で示します。
静止画
これまでの説明では、曲線の挙動を理解するために、「\(a^x\)」と「\(\log a\)」の式に着目していました。 そして、\(a\) の値自体には、あまり着目していませんでした。
しかし、指数関数を理解するときには、この \(a\) の値も重要です。 特に大事なのは、\(\log a=1\) になるときの \(a\) の値です。 それが、ネイピア数 \(\mathrm{e} = 2.71828 \dots\) です。
先に示したアニメーションの中にも、この \(a= \mathrm{e}\) のときのグラフが描かれています。 しかし、アニメーションでは、個々のグラフは、瞬間的にしか表示されないため、このグラフを肉眼で確認するのは困難です。 そこで、この後、\(a= \mathrm{e}\) のときのグラフを、静止画で示します。
また、この \(a= \mathrm{e}\) は、前の節の最後に説明した、3つの状態の式のうち、2番目の式に対応します。 残り2つの状態についても、静止画のグラフを確認することで、理解が深まると思います。 そこで、この後、\(a=2, 4\) のときのグラフも、静止画で示します。
例1: \(a=2\)
\(a=2\) のときの、2つのグラフの静止画を、以下に示します。
\(a=2\) が、\(\mathrm{e}\) より小さいこと \((a=2 < \mathrm{e})\) を、意識してください。
対数関数 \(\log x\) の \(x\) に、\(a=2\) を代入すると、以下のようになります。
\[\log a = \log 2 \approx 0.693 < 1\]
対数関数のグラフでも、赤い点の \(y\) 軸の値が、\(1\) より小さいことを確認できます。
次に、指数関数と、その導関数の数式に、\(a=2\) を代入すると、以下のようになります。
\[\begin{alignat*}{2} y \, & = a^x & & = 2^x \\ y' & = a^x \log a & & = 2^x \log 2 \approx 2^x \times (0.693) \end{alignat*}\]
\[\therefore \, y > y'\]
指数関数のグラフでも、指数関数の曲線の値が、導関数の曲線の値より、常に大きいことを確認できます。
例2: \(a= \mathrm{e}\)
\(a= \mathrm{e}\) のときの、2つのグラフの静止画を、以下に示します。
対数関数 \(\log x\) の \(x\) に、\(a= \mathrm{e}\) を代入すると、以下のようになります。
\[\log a = \log \mathrm{e} = 1\]
対数関数のグラフでも、赤い点の \(y\) 軸の値が、\(1\) と等しいことを確認できます。
次に、指数関数と、その導関数の数式に、\(a= \mathrm{e}\) を代入すると、以下のようになります。
\[\begin{alignat*}{2} y \, & = a^x & & = {\mathrm{e}}^x \\ y' & = a^x \log a & & = {\mathrm{e}}^x \log {\mathrm{e}} = {\mathrm{e}}^x \end{alignat*}\]
\[\therefore \, y = y'\]
指数関数のグラフでも、指数関数の曲線と、導関数の曲線が、一致していることを確認できます。
ここで述べたことは、重要なので、以下にまとめます。
指数関数 \(y=a^x\) と、その導関数 \(y'=a^x \log a\) は、\(a= \mathrm{e}\) のとき、一致して、\(y = y' = {\mathrm{e}}^x\) となります。
例3: \(a=4\)
\(a=4\) のときの、2つのグラフの静止画を、以下に示します。
\(a=4\) が、\(\mathrm{e}\) より大きいこと \((a=4 > \mathrm{e})\) を、意識してください。
対数関数 \(\log x\) の \(x\) に、\(a=4\) を代入すると、以下のようになります。
\[\log a = \log 4 \approx 1.386 > 1\]
対数関数のグラフでも、赤い点の \(y\) 軸の値が、\(1\) より大きいことを確認できます。
次に、指数関数と、その導関数の数式に、\(a=4\) を代入すると、以下のようになります。
\[\begin{alignat*}{2} y \, & = a^x & & = 4^x \\ y' & = a^x \log a & & = 4^x \log 4 \approx 4^x \times (1.386) \end{alignat*}\]
\[\therefore \, y < y'\]
指数関数のグラフでも、指数関数の曲線の値が、導関数の曲線の値より、常に小さいことを確認できます。
\(a=2, \mathrm{e} ,4\) の3つの例を理解した後で、前述したアニメーションを、もう一度見てみると、指数関数と導関数の、2つの曲線の変化が、より理解できると思います。
「指数関数とその導関数のアニメーション」の章は、ここで終了です。
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